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20110910051706 樹下太郎:著『小説 四十九歳大全集』光文社文庫


41歳になった時に「バカボンのパパと同い歳になった」という人は大勢いても、
49歳になった時に「ピストルのおまわりさんと同い歳になった」という人はいませんね。


じゃあオレが、その最初の例になる!


そう、ピストルのおまわりさんは49歳なんですよ。


  「あんたの歳は靴下シジュウクサイ(始終臭い)でしょう」
  「一日じゅう靴を履いているからな!」


ほら、認めたー!
否定しなかった!


然り、おまわりさんの年齢はクツシタ四十九歳なのである。


バカボンのパパが産まれたのは昭和2年です。
産まれて、すぐに歩いて、「天上天下唯我独尊」と喋った大天才児だった。


その頃に、幼児のパパが道を歩いていると
八百屋の店先からリンゴを盗もうとして捕まって、
店のオヤジに「将来オマエは大泥棒になるぞ!」と叱られている
目玉のつながった少年がいて、
通りがかったパパは即座に
「違います。この人は日本一ピストルの弾を射つおまわりさんになります」と
大予言までしている。


つまり、パパが産まれた直後に、
もう目ン玉つながりの少年はランニングシャツを着て、
盗みが働けるぐらいに成長していた。
ここに年齢差がある。
その少年は、もうすでに8歳になっていた、ということなんでしょうね。


(ちなみに、その後でパパは大きなクシャミをして、
 頭の中の歯車が1個、ポーンと口から飛び出して、
 コロコロ転がって、川にボチャンと落ちて、
 そこからパパは御存知のような人物になってしまうわけです。
 ハジメちゃんの大天才は、だから本来のパパの遺伝子。
 パパのバカは後天的なものなので、
 バカボンは、バカの遺伝子を継いでいるわけではなく、
 あの年齢の子供として人並みに無邪気で幼稚で純粋であるだけで、
 実際はママ同様の平凡な凡人なのでしょう。)


昭和2年生まれのパパが41歳という設定なのは、
天才バカボン』連載開始の年に41歳の人物として登場して、
そこから永遠に歳をとらない…ということなんだと思います。
(実は「少年マガジン」での連載開始は昭和42年だから、
 ちょっとズレてるんだけど。)


なので、8歳年上のおまわりさんも、
49歳の警官として登場して、そこから永遠に歳をとらない。
…ってことは、おまわりさんは大正8年の生まれだったのか!?


「四十九」は「四重苦」にも通じる。
  ※目ン玉がつながっている
  ※鼻の穴がひとつしかない
  ※歯が下から1本だけ生えているのみ
この三重苦に加えて
  ※靴下が始終臭い
という四倍の苦しみを抱えて生きているわけだ、おまわりさんは!


そりゃ「あ〜あ。革命でも起きないかな〜」ぐらい考えるよ!


(「頭がモヒカン」というのは苦のうちに入らないと思う。
 たしかに少年時代から頭はモヒカンなので、
 一生そういう形でしか髪が生えてこないという生来の不幸ではあるのだろうが)