木馬が廻っちゃう

 『キサラギ/プレミアム・エディション』(DVD×2)
 『キサラギ/スタンダード・エディション』(DVD)


映画は、いま初めてテレビで観たけど、
すでに4年前にノベライズを読んでいます。


 古沢良太:原作・脚本/相田冬二:ノベライズ『キサラギ』角川文庫(【参照】


その時は、
「ノベライズじゃなくて、映画版のシナリオで読みたいし、
 もっと言えば、元の芝居の戯曲版で読みたい」
と、そう思った。


(後に、映画のシナリオも出版されている。
 まだ読んでいませんけれど。)


 古沢良太:著『キサラギ【シナリオ版】』白水社


なるほど、オレがノベライズを読んで気になっていたのは、
主にラストシーンの処理だけだったんだな。


大磯ロングビーチの司会者・宍戸錠が唐突に現われて真の真相を…」
というところに、
アンニャモンニャな「台無し」感を受け取ったわけだ。


映画でも、ラストシーンには唐突に
大磯ロングビーチの司会者・宍戸錠が登場する。


だけど映画で観れば、そのことの意味は分かりますよ。


「真の真相」なんて、どこにも無いんだ。


彼らは毎年、アイドルの命日に集まっては、
違った「真相」を求めて推理合戦を展開することになるんだ、これから。


毎年ひとりずつ、参加者が増えていくんだ。


没後1年の一周忌の日には5人だったメンバー、
その日には、殴り合い・罵り合い・蹴飛ばし合い・刃物とウンコの果てに
それなりの結論が出た。
そして5人で楽しくヲタ芸を打った。


翌年の三回忌には、ひとり増えて、
新メンバー宍戸錠により
また新たなる「事件の真相」が開陳されて、
殴り合い・罵り合い・蹴飛ばし合い・刃物とウンコ(銃器もあるな、きっと)の果てに
それなりの結論が出るのだろう。
そして、6人で楽しくヲタ芸を打つのだろう。


さらに翌年の四回忌には、さらに増えて7人で…。


そのことを示唆して終わった、というのが
宍戸錠が出てきた意味だったんですよな。


その毎年の新推理合戦を続けて描け、
キサラギ2』『キサラギ3』を次々と作れ、なんて
言っているんじゃなくてね。


そんなものの中身は出さなくたっていい。


そうやって永遠に遊んでいるのが、この人たちなんですよ、という、
つまりは、そういう結末である、ということだ。


ノベライズは、なにしろ活字の文庫本だから、
そういうことを表現するのが難しかったのか何なのか、
ライターちゃんに「単独のミステリー小説としても評価されたい」という野心があったのか、
本格ミステリーっぽい(あくまで「っぽい」)イヤな後味の畳み方を盛って、
別の結末をこじつけて決着させたわけですよ。
その処理の手口が、オレの、お気に召さなかったんですなー。


映画版が示唆している(と、オレが受け止めている)
「毎年メンバーが増えて永遠に続く推理ゲーム大会」という流れのほうが
オレには面白いよ。


だって、それならオレだって参加できるかも知れないし!


たぶん今年、2011年2月の「六回忌」には、
彼女の初グラビア誌「月刊ホットレモン」でライターやってた、と
自称する不審人物が現われて
まったく想像もできなかった迷推理を展開して、
古株メンバーを呆れさせていたはずだよ!


「SHOW ME」という間違った英語を彼女に教えたのはボクなんです、
だから彼女は死んだんです…とか言い出して、
責任を感じて泣くね。


彼女は英語に憧れていました、
ボクがプレゼントしたブラッドベリヴォネガット、P・K・ディックのせいです。


新潮文庫の『ロンドン・ラジカル・ウォーク』もあげました。


20110321073414 花房浩一:著『ロンドン・ラジカル・ウォーク 音楽から政治までのライフ・カタログ』新潮文庫


知らないよ、そんなこたぁ。


もちろん、江國香織もあげてるヨ!


 『Love Songs』幻冬舎文庫
「消息」唯川恵
これが私の生きる道山本文緒
「エンジェル」角田光代
「I'm Proud」桜井亜美
「ダイナマイト」横森理香
「やさしい気持ち」狗飼恭子
「Cowgirl Blues」江國香織
「STORM」小池真理子


(ただ、映画版が何から何までベストだった、というわけでもなくて、
 先にノベライズで内容を知っていたせいかも知れないけど
 ジャーマネが激ヤセするCGの映像なんかは、
 かえって蛇足に感じたなあ。
 そういう意味では、やっぱり大元の芝居のバージョンがベストなのかね。
 いや、むしろ、ラジオドラマでもいい。
 そうだ、ラジオドラマのほうがいいのかもね!
 そこはそれ、そう思う人も多かったのでしょう、
 ラジオドラマのバージョンも、ちゃんと出ているらしいんですけど。)


 『キサラギ 声優ver.』(CD×2)